第4回:人がついてゆきたくなるリーダーの条件

新 将命

(聞き手)森川智之

人ザイマトリックスを経営に生かす

―――(森川)前回は、人ザイの4タイプということで人ザイマトリックスの読み方のお話をしていただきましたが、いよいよ今回はマトリックスを経営に生かす方法についてお伺いできればと思います。

(新) これを読んでいる人は経営者とか管理者が多いと思うのだけれども、まずはわが社の社員をこのマトリックスを参考にしながら分類してみたらどうでしょうか。例えば、山田はどの象限、中村はどう、後藤はどう、と分類してみたらどうでしょう。もちろん人事部長とか事業部長の意見も聞きながらですね。

 そうすると分類した時のメリットは何かというとですね、こういうことができるんですよ。今日現在、こいつは間違いなく右上に入っているなという社員がいたらその社員はどう使ったらいいかというと、一言で言ってしまえば「目いっぱい任せる」ですよ。スキル高マインド高だから細かい介入をしたら却ってやる気をなくすから目いっぱい任せる。Maximum Delegationだと。ただ条件が一つだけあって、事前の合意目標、話し合って部下の目標については握っている、そのうえでやり方は目いっぱい任せるということです。目いっぱい任せる。

 右下はですね、スキルは高いけどマインドは低いんですよ。Motivationが低いんですよ。だからMotivationアップを図ると、Motivateすると、そうすると右上に引っ越しするでしょう。

 それから左上は何が足りないかと言えばスキルが足りないわけですよ。だからやっぱりスキルトレーニングだと、いうことでかなり論理的ですよね。

 左下はですね、ロジカルシンキングの延長でいえば、スキルが足りなくてマインドが足りないんですよ。で、答えが出てスキルトレーニングをして、マインドアップ、Motivationアップを図るという。論理的には左下が右上に行きますよね。ところがなかなかそういかないことも良くあるわけです。その場合はどうするかというと、人の使い方で考えていいのは「適材適所」です。私がジョンソン&ジョンソンの社長時代に営業に配属したら使い物にならない人がいたんですよ。で、人事とか関連の部長と相談の上ですねこの人を経理に配転したんですが、そうしたら水を得た魚のようになって元気に仕事していましたよ。営業ではだめだけど経理では使えると、製造では駄目だけど人事では花が咲くと。そういう適材適所に対して、もしかしてこいつは不適材不適所なのかなと考えて配置転換をするという考え方もあるでしょうね。で、これを一、二回やってどうしても駄目だ、左下の箱から抜け出せないという社員は、まあお引き取り願うということをやるべきでしょうね。経営者はやっぱり辞めさせるという判断力と決断力が必要になってきます。

 これがですね右上、右下、左上、左下、分けてそれぞれ基本的にどう使うかという経営上の原理原則なんですよね。もちろん、一番望ましいのは右上であるスキル高マインド高のリーダー人財である、もしこれがわが社に一人もいないということが何を意味するかというとわが社にはリーダーが一人もいないということですよ、そういう会社が伸びるはずがないということですよね。

 いまいろんな部下の分類とかそれぞれの部下をどう扱うかという話をしたけれども、あなたがもし経営者であるならば、その前にぜひやっておかなければならないことが一つあります。なんでしょうかというと答えは、まずは自分が右上に入るべきですよね。人がああだこうだという前にですよね自分が身を律するとまず「隗より始めよ」ですよね。だから経営者としては自分のスキルアップを図ってマインドアップを図らないといけません。

 

「人は論理により説得され、感情により動く」

 ところが、ときどき中小企業の経営者にですね、新さんそうおっしゃるけども経営ってのは最終的な目的は利益でしょう、税引後の利益でしょう、ボトムラインでしょうと、利益をあげるためにスキルが大事だとこれは納得、わかる、でもマインドなんてね、こんな漠然とした面倒な話は持ち出す必要はないじゃないですか、スキルだけでいいじゃないですかと、たまにいるんですよ。

 これはやっぱり私は間違いだと思うんですよ。なぜかというとこういう素晴らしい言葉があって「人は論理により説得され、感情により動く」ということですね。例えば50人の社員がいる会社があって社長がいた場合、50人の社員が社長に持っている感情にはざくっと大きく分けて二つあって、一つは単純化していうと「今社長の言っていることは間違っている、理屈にあっていない、ピントがずれていると、あの人は時々間違ったことを言う、現にこの問題について言っていることは間違いで俺は反対だと、時々あの人は間違ったことを言うんだけどもそれはそれとして俺はあの人を尊敬できるから人間としてこれからも一緒に仕事をやりたいこれからもあの人についていきたい」と従業員が思っている。それに対してもう一つは「あの人の言っていることは正しい、論理性もあって数字の裏付けもあると、だから議論の余地はない、反発できない、反発できないんだけども正しいことを言っているんだけども、俺は今一つあの人を敬愛できない、尊敬できないところがある、お手柄は全部ひとり占めして失敗は部下に押し付けるという傾向が強いと、だから自分の保身には汲々としているのが見え見えだけども我々の将来のキャリアパスについて親身になって相談に乗ってくれるというそぶりすらないと、あまりにも自己中心的であると、従って今言っていることは論理性があって正しいんだけどもいまいちあの人を俺は信頼できない、だからなかなか喜んでついていく気にはならない」。こういう場合ですね、仮に前をAと後をBとすると普通Aの社員の方が良い仕事をするわけですよね。社長である私が部下に論理性高く説得するというのは限りなくこれはスキルの部分ですよね、その場合彼らは頭で理解するんですよ。ところがあの人が言うんだからちょっとおかしいけどやってみようよというですね、その理解をした後に納得するのは肚でするんですよ。古い日本語でいうと肚落ちするとか腑に落ちるという言葉がありますよね。納得すると、納得して初めて人は行動をとる。ということは、理解というのはざっくり言うとスキルの領域ですが、納得というのは人格に納得、人柄に敬愛というようにスキルよりもその人の人間性、人間力の問題、マインドの領域ですよ。だから人が喜んでついていく会社にするためにはトップがやっぱりスキルも高いという論理性もあるけれどもマインドも高いという人格的な面これも備わらないとやはり本物のリーダーにはなれないでしょうね。従ってスキルプラスマインドも必要でしょうという風に私は考えるんですね。

 そうすると経営者はスキル高マインド高でなければならないということはわかったんだけども、じゃあ経営者やリーダーに必須の求められるスキルとは何でしょうかマインドとは何でしょうかという具体的な話をしないと私の話が良く見えてこないというところでしょうが、具体的な話は次回に譲りましょう。

 ついでに言うとですね、我々経営の世界では、あいつは非常にスキルが高いと、何か手に職がある、営業力とか経理とかなんでも良いんですけどね、スキルが高いやつをなんていうかというと「あいつはできるやつだ」と。それで、スキルは平凡であると、たいしたことは無いけども人間的、人格的に立派だという人はですね「あの人はできた人だ」と。だからビジネスマンは「できる人」と「できた人」がいる。「できる人」スキルだけの人は定年までどういった仕事をやったらいいかというと、通常部下を一人も持たない専門職が良い、スペシャリストが良い。一部こういう人が会社の中に必要です。必要であるけども、人を率いてぐいぐいという経営者では無い、

 それからスキルは駄目、平凡、でも人間的、人格的には立派だと落ち着きがあるという「できた人」。これはどういう仕事をやったらいいかというと、大企業だったらね私は思うんだけども「冠婚葬祭担当の副社長」ですよね。それが駄目なら会社を出てまあ宣教師かお坊さんになる道を選んだ方が良いんでしょう。

 じゃあ、もしあなたが本物のリーダーになりたいと、経営者になりたいと思うんだったら、あなたはどういう人にあなたを作らなければいけないかというと「できるできた人」ということですね。スキルも高い方が人も安心してついていく、これがリーダー人財ですよね。つまりLeaderという言葉がどういう言葉かというとLeadする人という意味ですよ。ところが自分がLeaderになりたいなと思って後ろを振り向いたら誰もついてこないとなるとLeadしようがない。ついてくる人のことをFollowerというんですよ。だから喜んでついてくる人がいて初めてその人たちをLeadをしてLeaderになれるんですよ、だから同じことを裏返して言うとLeaderにはFollowerが必要と、そして人が喜んでついてくるにはスキル高、仕事ができるということは置いといて、プラスアルファ人間力を高めなければいけない。

 経営学とは人間学であると喝破した昔の経営者がいます。新日本製鉄の会長だった永野重雄という人ですが、経営学とは人間学だと、最終的にはこれに尽きちゃうんですね、あの人の後だから喜んでついていきたいというようなスキル高マインド高という人間を目指しましょうというのが今回の結びですね。

 では、具体的にスキルとは何か、マインドとはなんだ、何を意識し、何をすればいいかというのは次のお楽しみということで。

 

「ダイヤモンドはダイヤモンドにより磨かれ、人は人により磨かれる」

―――次に進む前に、今までのお話しで少しお伺いしたいのですが。例えば経営者が自分の会社の人材を見回したとして、はたと自分の会社には右上の人材はいないと気が付いてしまった場合にどうするかというと、考え方としては右上の人材を外から連れてくるというものといやそうでは無くて右下、左上の人材を右上に導くべきという考え方があると思うのですが、新さんの経験上どのようにお考えでしょうか。

 

 順番としては、答えは今の問の中であなたが出しているのだけども、吟味してどう評価してもスキル高マインド高の右上が今日うちの会社にいないなという場合、これは大変な問題なんだけども、その場合の順番はやっぱり8割以上という圧倒的過半数を占める右下のスキルはあれどマインドは低いという人ザイを右上に引っ越しさせるというのが一番目でしょうね。それからちょっと間隔を置いて左上を右上にやるとか左下を右上にやるとか努めるべきであるけども、左上を右上にすぐ導けるということはなかなかないですよね。新入社員ですから。時間がかかると。それからはっきり言うとですね左下のこの3%の中で使い物になる人はあまりいないんですよ。3%の中の10%くらいのもんですよ。あとはまあ使い物にならないんですよ。そうすると、頼りになるのは右下でしょうね。何かの理由でMotivationアップを図れば右上になりますよね。潜在的なリーダー人財の多くは右下にいるんですよね。

で、その努力をするのが第一番目で、第二番目が右下がどうしても不足であると、右下を右上にしたいんだけどもどうしてもなかなかできないと、何人かいったけどももうちょっと何人かほしいというときには、外部からの新しい血の導入ということは選択的にやるべきでしょうね。でも右下を右上に上げる努力を怠っていきなり外からこれを持ってこようというのは、私に言わせるとこれは邪道である、ものの優先順位を間違えていると。ということは、他から新しい血を導入することは否定しませんけどね。内部の人間を活用するとい努力をしたうえでやるということが、私の哲学というか考え方ですよ。

 賛成?(笑)

 

―――はい、私も本当にその通りだと思います。そこで、右上に導くということですが、仮に社長やリーダーが右上の人財であったとしたら、右上の人財と一緒に仕事をしている右下や左上の人間は時間とともに右上に引き寄せられていくのではと思うのですが。そのあたりはどのようなものでしょうか。

 

 基本的に答えはYesです。

 あのですね、こういう諺があるんですよ。「ダイヤモンドはダイヤモンドにより磨かれ、人は人により磨かれる」。だから自分を磨きたい、自分のグレードアップを図りたいと思ったら、一つのコツは自分よりグレードの高い人と付き合うと知らず知らずのうちに自分のグレードアップができていることが多いんですよ。したがって、左上、右下の人は右上のハイクオリティのグレードの高いダイヤモンドとアクセスするチャンスを増やすとだんだん自分も右上に近づくという効果もあります。

 

―――そうするとちょっと怖い話ですけど、この話と、前の質問に戻ってしまうのですが、長年会社をやっているのに自分の会社に右上の人財がいないということは、経営者自身が右上人財で無い可能性があるということになってしまいますね。

 

 その可能性があるというよりも、可能性が極めて高いと。

 自分が右上になる努力を十分にしていない、それから右下、左上の人間を右上にアップグレードする努力を十分にしていないと、この努力を怠っていてリーダーがいないというのはある意味天に唾をするということでありますよね。

 後で話をしますけど、私がよく言う「他責」の人ですよね。自分の努力をしないで、人が悪い、会社が悪いとばかりいう。

 自分が社長やトップをやっていて、会社に右上の人財がいないという発言をすればするほど、自分は経営者としての能力がないと白状して暴露しているんですよ。結構そういう経営者がいるんですけどもね。じゃあお前さんのやるべきことをやったのと聞きたくなることもあるんですよ。


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